近藤明男

「家族愛」と「郷土愛」を二大テーマに上質な作品を

2007年の『ふみ子の海』では昭和10年の、2010年の『エクレール・お菓子放浪記』では終戦の年・昭和20年の日本を舞台に撮影をしましたが、今回の映画『うさぎ追いし』ではさらに時代を遡った、明治から大正にかけての日本を描いています。
山極勝三郎--ほぼ同時代の医学者・野口英世と比較すると、確かに決してポピュラーとは言えない人物です。
しかし、彼の成し遂げた業績は、野口英世のそれに決してひけを取るものではなく、むしろ世界の医学界では評価が高くすらあるのです。
その勝三郎が、日清・日露と第一次世界大戦をはじめとする戦争や、関東大震災という大きな時代のうねりの中、自身も重い病と闘いながら、世界初の人工癌を発見していく様を映画にするにあたって、単なる偉人物語にはしたくないと考えました。
妻と子供達への限りない「家族愛」と、同じく長野出身の作詞家・高野辰之《うさぎ追いし彼の山 小鮒釣りし彼の川》の名曲『故郷』をサブモチーフにした「郷土愛」、この二つを大きなテーマとして、きめ細かく丁寧に、かつドラマチックな、上質なエンターテーメント作品に仕上げるつもりです。
癌予防と癌患者の支援は今や社会的対策を求められる事柄であり、勝三郎の人工癌発生から100 年を迎えた2015年に続き、2016 年もまた1966年に東京で開催された国際癌会議から50年目の節目を迎える記念すべき年となっています。
世界中の医学界から数多くの重鎮が東京に集まるこの時こそ、日本のみならず全世界で「ヤマギワ」を再発見、再認識してもらう絶好の機会になればと、この作品を全力を挙げて作る所存です。

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